和菓子の素材(1)小豆のお話
執筆者: 木ノ下 千栄(きのした ちえ) |
餡(あん)は和菓子の基盤であり、生命です。その菓子の美味しさは餡で決まるといっても過言ではありません。 この餡の主体材料として、昔から和菓子において小豆は非常に重要とされてきました。小豆は日本で古来から栽培されており、『古事記』や『日本書紀』にも記載されています。また『延喜式』などには、宮中の儀式に使われたことや邪気を払うために正月15日に小豆粥を食べることなどが記録されています。現在もそれが受け継がれ、祝事にお赤飯を用いるのはその名残です。 小豆はマメ科の1年草で、9月〜10月にかけて収穫されるものには約50種もの品種があります。色は圧倒的に赤ですが、その他に白や黒、緑など様々です。中でもその代表は「丹波大納言」と呼ぶ丹波地方で作られる小豆で、その名前の由来は、かつて大納言は宮中で抜刀しても切腹しないで済むことから、煮ても腹が割れない大粒の小豆を「大納言」と名づけたといわれています。 小豆は餡の中でも最も特色があり。用途も広く、万人に知られています。鹿の子、お赤飯、乾燥餡などのほか、餡としてはこし餡、つぶし餡、小豆羹、その他に用いられ、餡の中の王座を占めているといってよいでしょう。 成分上からみると、大豆はタンバク質と脂肪に富んでいますが、デンプンを含んでいません。しかし、小豆は脂肪が少ないのに対してデンプンを大量に含んでいます。そしてそのタンパク質も米や麦と比較するとかなり多く、ビタミンB1は大豆と同じくらい含まれています。ビタミンB1の存在が知られていなかった昔は、「小豆を食べると脚気が治る」といわれていました。 |
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